殘唐五代史演義傳第四回 黄巣、蔵梅寺で事を起こす (黃巢藏梅寺起手)

要約

黄巣が山頂の寺に着くと碑に蔵梅禅寺の四字があった。行者の報せで長老は香を焚かせ拝礼して迎え、方丈に座らせて主公を迎えるのが遅れたと詫び、一喝されると二鬼の一件を語った。黄巣はこの寺の僧は一人も殺すまいと心に決め、酒席のもてなしを受けて寺に潜んだ。

ある日、花園の卓の琴を弾くと東南の風が起こり、仙女が現れて、上方の命により人を八百万殺し血は三千里流れる宝剣を授け、清風と化して去った。巣が剣を見せると長老は偽りはないと言った。時は五月十四日。巣は庚子年壬申月甲申日庚午時の五月十五日を選び、剣を試す日には寺の僧を避けさせよと命じた。折よく王十万家が十五日に僧衆を斎に招いたので僧は皆出かけ、残った長老は朝飯を出し、身を避けよと言われて門前の空洞の大樹に隠れた。

午の刻、巣は天を仰ぎ、世に道が無く奸邪が寵任され、主上は容貌でしか豪傑を見分けぬと訴え、権奸を削り天下を掃き清めて江山を奪うと誓って祈り、寺の僧は一人も殺さぬのが願いだと嘆いた。人影のない外で大樹に最初の一刀を振るうと首が落ちて鮮血が噴き、検めれば法明長老で、巣は殺す本心は無く定めを逃れられなかっただけだと言い、悼む詩を重ねた。卓吾子は、僖宗が容貌で人を取って黄巣を取りそこない、八百万を殺させて唐家の天下を五代に分裂させたと評した。

現代語訳全文

蔵梅寺への到着

  • 黄巣は山頂に寺を見つけた。碑には「蔵梅禅寺」の四字が記され、景色は際立った(詩:金光と紫霧に包まれた寺の絶景を詠む)。
  • 黄巣がちょうど見物していると、かの行者がこれを見て長老に報せた。「山門の外に一人、たいそう異様な風貌の者がおります。おそらく黄巣でしょう」と。長老はこれを聞くと、すぐさま寺の僧衆に命じて毛氈を敷き香を焚かせ、一歩ごとに拝礼しながら黄巣を出迎え、方丈の内へ案内して座らせた。
  • 長老は「主公をお迎えするのが遅れました。どうか小僧の罪をお許しください」と言った。巣は「たわけたことを申すな。誰が主公か」と一喝した。長老はそこで以前の一件をつぶさに語った。黄巣は心の中でひそかに「もし本当にそのようなことがあるなら、この寺の僧を一人たりとも殺すまい」と思った。語り終えると、長老は酒席を設けてもてなし、巣はそのまま寺に身を潜めた。

宝剣の授与

  • ある日、後ろの花園に景色を見に行き、木の下を歩いていると、卓の上に琴が一張置かれているのを見た。巣は近づいて一曲弾き終えると、東南の風が起こり、巽の方角に雲が生じた。天風が吹き過ぎたところに、一人の仙女が現れ、黄巣の前に立って言った。「私は上方の命を受け、遣わされてまいりました。この一口の宝剣をあなたに授けます。この剣は人を八百万殺し、血は三千里流れるでしょう」と。
  • 巣は剣を手に受け取り、頭を垂れて拝んだ。仙女は指さして「ほら、あの東南の方角に一人の仙長がやって参りましたよ」と言った。巣が振り返って見ると、仙女は一陣の清風と化して去った。
  • 巣は剣を得て喜びに堪えず、剣を長老に見せ、事の次第を語った。長老は「拙僧の申したことに、決して偽りはございません」と言った。時はちょうど五月十四日であった。

起手の日

  • 巣は長老に告げた。「私は庚子年壬申月甲申日庚午時、すなわち五月十五日を選んだ。私が剣を試して事を起こす日には、寺の僧たちは皆避けさせよ」と。
  • 言い終わらぬうちに、行者が来て報せた。「山の後ろの王十万家から使いが参り、十五日に寺の大小の僧衆を斎にお招きしたいとのことです」と。長老は「お前たち僧は明日皆斎へ行きなさい。私は寺に残って主公にお仕えする」と言いつけた。
  • 言いつけ終えると、翌日の早朝、僧たちはそろって斎へ出かけ、長老は黄巣に朝飯を用意して食べさせた。巣は「今日の午の刻三刻に、最初の一刀を振るって事を起こす。あなたは身を避けよ」と言った。長老は黄巣に別れを告げ、自ら身を隠しに行った。門を出るとほとりに一株の大樹があり、樹齢を経て幹の中が空洞になっていたので、長老はその樹の中に身を隠した。いつしか午の刻となった。

開刀の誓いと惨事

  • 黄巣は天を仰いで祈り謝して言った。「巣はもと唐の臣であり、一介の書生にすぎません。ただ、今の世に道が無く、奸邪の者どもが寵任され、人を用いるも退けるもあべこべで、乱を思う者が入り乱れております。権臣は賄賂と利を貪って賢才を問わず、主上はただ容貌の姿かたちだけを取って豪傑を見分けません。巣はこれによって誓って権奸を削り、天下を掃き清め、江山を奪い取ろうと存じます。まして宝剣を賜り臨まれ、謹んで明命を承りましたからには、この吉なる時期に乗じて腕をふるい肱を伸ばし、果たして密かなご加護を蒙り、命を受けて遠くまで栄えんことを」と。
  • 祈り終えると、手に宝剣を執って嘆いた。「私にはかねてよりの願いがある。寺の中の僧は一人も殺さぬということだ」と。大股で寺を出て、四方を見回すと人影は無く、そこでこの大樹を相手に最初の一刀を振るうことにした。剣を木に向かって一振りすると、たちまち人の首が地に落ち、鮮血が天に噴き上がった。巣は「まさかこの木の中に人がいたとは」と言った。
  • 検めると、それは法明長老であった。巣は「私は本心よりお前を殺すつもりは無かった。ただお前がこの大いなる定めから逃れられなかっただけだ」と言った。続けて証拠の詩を重ねた(詩:法明が定めから逃れられなかったことを悼む)。
  • 後の事がどうなるかは、次回に続く。

評語

  • 卓吾子は評していう。「僖宗は容貌で人を取ったために、黄巣という賊を取りそこない、人を殺すこと八百万、血の流れること三千里に至らしめ、唐家の丸ごと一つであった天下を、五代に分裂させることとなった。まして事を起こす手始めの一刀では、天曹が法明を殺すことを司り、法明がたとえさまざまに手を尽くして救いを求めたとて、この大いなる定めを逃れられようか」と。
原文(底本)
黃巢看山頂上有寺,碑上寫著藏梅禪寺四字,景致非凡。

  有詩為證:

    金光萬道衝雲漢,紫霧千條鎖翠峰,

    景物非凡觀不盡,原來卻是梵王宮。

  黃巢正遊玩間,那行者見了,報與長老。說:「山門外有一人,生得十分古怪,想是黃巢。」長老聽得,即吩咐本寺眾僧,鋪氈焚香,一步一拜,來接黃巢,至方丈內坐下。長老說:「接遲主公,乞恕小僧之罪。」巢喝道:「休胡說!誰是主公?」長老遂將前事備說一番。黃巢心中暗道:「我若果有此事,你這寺中僧人不殺一個。」言畢,長老安排酒席款待,巢遂匿於寺中。

  忽一日到後花園中看景,行至樹下,見桌上放著一張琴,巢近前撫罷一曲,則見東南風起,巽地雲生,天風過處,閃出一仙女,立在黃巢面前道:「吾奉上方款令,差吾下來,送此一口寶劍與你,此劍殺人八百萬,血流三千里。」巢接劍在手,低頭便拜。仙女指道:「兀的那東南方有一位仙長來了!」巢回頭看時,仙女化道清風而去。巢得劍歡喜不勝,將劍與長老看,說知其事,長老道:「貧僧決無謬言。」時值五月十四。

  巢叫長老云:「我選庚子年壬申月甲申日庚午時,是五月十五日,我試劍起手,你寺裡僧人,盡行迴避。」

  言未盡,只見行者來報曰:「山後王十萬家來請,十五日寺中大小僧眾赴齋。」長老吩咐:「你眾僧明日都去赴齋,我在寺中伏侍主公。」吩咐已畢,次日天早,眾僧齊去赴齋,長老安排早飯與黃巢吃。巢說:「今日午時三刻,開刀起手,你要迴避。」長老辭了黃巢,自去躲身。出門只見路旁一株大樹,年久心空,長老遂隱身於樹內,不覺午時已到。卻說黃巢望天祝謝曰:

    巢本唐臣,一介書生,只因當今無道,寵任奸邪,用舍顛倒,思亂紛紛。權臣貪賄財利,不論賢才;主上惟取相貌形容,不分豪傑。巢因此誓削權奸,掃清天下,奪取江山,況荷寶劍頒臨,欽承明命,乘此吉期,開肱展臂,果蒙默祜,受命遐昌。

  祝畢,手執寶劍歎曰:「我有願在先,不殺寺中一個僧人。」闊步出寺,四顧無人,就將這大樹起手開刀。把劍望樹上一砍,只見人頭落地,鮮血噴天。巢說:「莫非這樹內有人!」

  視之,乃法明長老。巢說:「我本心不要殺你,只因你躲此大數不過。」有詩為證:

    不肯參禪苦自修,法明長老命該休,

    身藏大樹無人見,誰識鋼刀不肯留。

    黃巢大樹試鋼刀,只道藏梅僧盡逃,

    非是法明藏不密,奈緣天數莫能饒。

  欲知後事如何,且看下回分解。

  卓吾子評:

  僖宗以貌取人,失之巢賊,致令殺人八百萬,血流三千里,唐家囫囫圇圇一個天下,分為五代,況起手開刀,天曹主殺法明,法明即多方求救,能倖免大數耶!

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